公園は命を支えている
朝、たくさんの名前を持つ白鳥は、杉の大橋側から植物園側に向かって移動していた。石橋へ回ると、白鳥は既に石橋の左隅の岸辺に上がって羽根づくろいを始めていた。
石橋を通りかかった3人家族(少年と両親)が白鳥を発見。大きくてびっくりしていた。少年が白鳥に向かって乱暴な言葉を吐いていた。悲しくなって、両親の前で「キミの何倍も生きている、弘前市の大切な白鳥なの」と注意した。老婆心である。
午後、いつもの場所で羽根づくろいをしていたが、やがて岸辺から降りた。通りかかりの観光客の女性が白鳥を発見して喜んでいた。別の女性がやってきて、この白鳥は10年以上も中濠に住んでいること、傷ついて飛べなくなって住み着いていること、1羽で可哀想であることなどをその観光客に説明していた。説明者の気持ちは十分に理解できるが・・・。
私は、自分の経験(20代中頃に3羽の白鳥に攻撃されそうになったこと)と、インターネットからの情報(【知っとこ!431】弘前公園の白鳥)と、40年以上前から弘前公園に勤務して白鳥に餌やりを行っている方の話に基づいて、この白鳥は昭和50年代に仙台のニッカ工場から譲り受けたつがいのコブ白鳥から生まれた子供のうちの1羽であり、40年近くにわたりこの公園に住んでおり、飛べなくされていると理解している。残念ながら、正式な記録を見ていないので確証はない。
しかし、白鳥は、1羽で立派に生きており、他の生き物たちから中濠の主として敬意を払われていて、多くの人から大切にされており、また多くの人に元気を与えている大切な存在であると感じている。
弘前市が、きちんと調査してこの白鳥が弘前公園で毅然と生きてきたことを人々に伝えて欲しい。
朝、白鳥が植物園側に移動した後、杉の大橋の植物園側は騒然とした雰囲気になった。カイツブリの子供が異常な程に高い声で鳴いていた。親カイツブリも側にいるのに鳴き止まない。カルガモたちもただ事ではない雰囲気である。どうしたのか・・・。
杉の大橋の植物園側の右側角。鷹がカルガモを捕って必死に岸に上げようとしていた。
午後、杉の大橋の植物園側にはカルガモたちの姿が全くなかった。杉の大橋の植物園側の右側角では鷹が獲物を食べていた。捕らえてから既に9時間近く経過している。鷹にとっては何日あるいは何週間ぶりの食事かもしれない。十分に食べてもらうことが餌食となったカルガモが報われることになるのだろう。
カルガモもカイツブリも石橋側に避難していた。たくさんの名前を持つ白鳥を含め、ここにいるすべての生き物たちが、今日の出来事を受け入れているような感じがする。
弘前公園はさまざまな生き物たちの命を支えている。