ココ
ココは弘前公園に40年以上も住んでいたコブハクチョウである。ココはたくさんの名前を持っていた。私が知っているだけでも、桜ちゃん、シロちゃん、ガー子、コブちゃん、スーちゃん、隊長などがある。この白鳥の生涯にわたって寄り添っていたと思われる、公園の餌係のおじさんは「ココ~、ココ~」と呼んでいた。それで、私もココと呼ぶことにした。
観光協会が桜祭り期間に中濠観光舟の運航を始めた途端、ココは邪魔者のように扱われた。ココが自分の領域に侵入した観光舟を威嚇するからである。最初の年は弥生の檻、2年目は植物園の檻に閉じ込められた。3年目の2019年の桜祭りでは、いつも住んでいる石橋の南側(観光舟が運航される濠)から北側に移された。
ココは公園のアイドル的存在で、いろんな人がパンやキャベツをもってきた。ココは人々の思いをしっかり受け止め、お腹が破裂するのではないかと心配になるほど食べていた。ココの食べっぷりは実に見事だった。私を含め、多くの人が中濠のココの姿から元気をもらっていたと思う。だから、ココが観光舟のために檻に閉じ込められたことに心を痛めていた人は少なくない。
Sさんは、ココを守りたい人たちと観光協会の間に立って、祭り期間中のココの生活環境の改善に努めてくれた公園の管理事務所の方である。私たち夫婦のしつこい訴えにも耳を傾けてくれた。檻に閉じ込められる状態から石橋の北側に移されたのは大きな一歩。
南側は休む場所もあちこちにある。やはり、北側より過ごしやすいよね。
ねぷた祭り期間中の観光舟運航ではココとの共存が試された。ココはどこにも移されることはなかった。
舟頭さんたちもココを刺激しないよう気遣ってくれたおかげで、ココは観光舟に怯えることなく安心しているようだった。
9月のココの暮らしは穏やかそうだった。
葉が色づき始めた頃、大げさな紅葉祭りの準備が進められていた。舟を固定するワイヤーにココが引っかからないか、たくさんのライトはココの睡眠を妨げないか、心配が募った。
中濠はだんだん騒々しくなっても、ココは平気なように見えた。
ココは祭り期間中毎日、菊人形舟を固定するワイヤーを通過して、この餌場にやってきた。観光協会は、中濠を菊人形舟、観光舟、数多くのライトによってけばけばしく飾り付けた。人はより自然な姿に感動するものだと思うけど・・。何はともあれ、ココ、無事に過ごしてくれて本当にありがとう。
晩秋の紅葉はココの美しさを浮き彫りにした。
ココ、すごく色っぽいよ。
この年の冬は、暖かい日と寒い日が気まぐれにやってきて、ココを翻弄した。
数年前から、ココの脚は相当に弱っているようだった。石橋の南側より一段低い北側の濠に落ちたのも弱った脚が水流に逆らえなかったせいかもしれない。水面は移動できていたが、氷の上を歩くことができず、移動するときは長い首を左右に動かして体全体で進んでいた。そのため、陽気に誘われて餌場から遠出していたココが氷に閉じ込められることが何度もあった。
困っているココを助けることができない。もどかしい。
でも、天候が味方してくれたこともあって、ココは餌場に戻れた。
管理事務所は既に年末年始の休みに入っている。私たちは、公園にとって迷惑行為であることを知りつつ、ココが餌場に戻れるよう願いながら、岸辺の氷を割って道を作った。
しかし、あともう少しというとき、ココはさらに遠く行ってしまった。ココを怖がらせてしまったことが、悲しくて悲しくて・・・
午後、ココは餌場に戻っていた。午前中は悲しみでいっぱいだった私にとって、この光景は奇跡としか思えなかった。氷を割って作った岸辺の道を使ってくれたのだろうか?そうでありますように。
1月に入ってココはほとんどの時間を餌場付近の氷の上で過ごしていた。衰弱しているようで、心配でならなかった。この朝は石橋から少し移動していた。氷から逃れる場所を探していたのかもしれない。
氷上に、長い首を左右に揺らしながら戻ってきた跡が残っている。
もう少し頑張れると思ったけれど、翌朝(2019年1月5日)、いつも休憩していた餌場から離れた岸の上でココは亡くなっていた。白いぬいぐるみのようなものがふわっと置かれているようにみえた。どうやってそこにたどり着けたのだろう?いろいろ謎が残る。でも、冷たい氷の上ではなく、落ち葉の布団の上だったことがありがたかった。そうっとしておこうと思った。
ココ、あなたが亡くなって3回目の冬です。
あなたの40年以上にもわたる生涯に寄り添った、ココの名付け親と思われる、公園の餌係の方、餌場付近の氷を割ってあなたが過ごせる場所を確保してくれた係の方、あなたが石橋の北側に落ちたときにあなたを助けて、二度と落ちないように柵を作ってくれた係の方、そして長年にわたりパンやキャベツを持ってきていた市民の方たち、その他、あなたと出会ったたくさんの人たちにとって、あなたは大切な存在だったと思います。あなたの側にいたカルガモやオシドリ、あなたとすれ違ったカイツブリも、あなたが中濠にいてくれることで安心していたに違いありません。
ココ、弘前公園に住んでくれてありがとう。精一杯に生きてくれてありがとう。そして、たくさん食べてくれて本当にありがとう。
私は、過激化していく観光イベントからココを少しでも守りたいと思ってこのブログを始めました。しかし、近頃はなかなか更新できなくなったため、これで一旦終わりにすることにします。いつかまた別の形で再開できればと思っています。
これまで訪れてくださった方々に心から感謝いたします。
なごり紅葉と水鳥たち
公園の秋は華やか。
一瞬、松に赤い花が咲いているように見えた。
イチョウの黄色の絨毯と向こう側の緑のコントラストがちょっといい。
くすんだ紅葉も風情がある。
そろそろ南が向かわないと寒くなるよ。
冬毛に衣替えしているから、寒さは大丈夫だよね。
工事は来年2月まで続くらしいから、この光景は一時的かもしれないが、やはり、水のある西濠は豊かですがすがしい。
明日から里にも雪が降るらしい。白い世界も楽しみである。
木々の緑ときれいな水はありがたい
「三角池のカルガモ親子」
順調に成長してる。お母さん、頑張ってるね。
「外濠のカルガモ親子?」
きっとあのカルガモ親子(母と9羽の子)の一部だと思う。
外濠の子も三角池の子も飛ぶ練習をしなければならない。広い西濠は最適な練習場所だけど、春陽橋の工事のために水位が低いから今年は無理そうだ。外濠で最低限の練習をして岩木川に移動するのかな・・・?あのお母さんたちだから、どんな状況でも子供たちを立派に成長させてくれるはず。大丈夫。
「三角池のバン親子」
ご一家(両親と3羽の子)全員には会えないけど、三角池付近はヨシの茂みに守られているから、みなさん無事だと思う。そろそろ旅立ちのときですね。
「蓮池のカイツブリ親子」
ヨシは子育て中に刈り取られる心配があるけど、蓮は観光資源と考えられているようだから、突然刈り取られる心配はない。水面に広がる大きな蓮の葉はカラスやノスリやヒトから子供たちを守ってくれる。あなたたちは蓮池を子育ての場所に選ぶことができでラッキーですね。
「西濠のカイツブリ」
一頃、ボート乗り場の南側のヨシの茂みで抱卵を試みていたカップルの1羽かな?少し期待をしていたけど・・・。
春陽橋の工事のために水位が下げられ、ボート乗り場の南側と北側(橋の南側)は干上がっている。これではカイツブリ夫婦は子育てができない。悲しい。
それにしても、あんなにいた魚たちはいったいどうなったんだろう。
ここは春陽橋の北端の、岩木川への出口となる。水位をここで調整しているようだ。ここの水位を下げることで、川上にあたる春陽橋の南側(ボート乗り場周辺)は干上がるということか。
春陽橋の北側は浅くなっているけど、水面が広がっている。
西濠が干上がっていてビックリしたでしょ。
外濠は、この先の右側で西濠につながっている。木々の緑ときれいな水のある公園はやはり気持ちがいい。
バンご一家(2)カルガモご一家(3)カイツブリご一家(4)
「三角池のバンご一家」
1年に2回子育てをする鳥の場合、1回目を1番子、2回目を2番子と言うらしい。
「三角池のカルガモご一家」
噂で聞いていた三角池の3羽の雛たちにようやく会えた。急な斜面に立っているお母さんは、少し離れたところで休んでいる雛たちを見守っている。母がんばる。
「外濠のカルガモご一家」
お母さんの合図で、この後、子供たちは水面に降りた。運動と夕食の時間。
子供たちはお母さんと同じようなサイズになったけど、羽根はまだまだ小っちゃい。
「蓮池のカイツブリご一家」
蓮がこの子たちを守ってくれるから安心。ときどき会えるのはラッキーとしか言えない。水面が広がっている部分で久しぶりにご一家に会う。みんなのびのび。
「中濠のカイツブリご一家」
今年は2番子は誕生しなかったようだ。石垣の草刈りのせいで営巣場所がなくなったから仕方がない。草がぐんぐん伸びますように。来年もあなたたちが来てくれますように。
てっきり、子供たちは自立したと思っていたけど、ときには親と一緒に過ごすこともあるらしい。
「西濠のカイツブリたち」
この頃、親子らしきカイツブリが過ごしている。西濠では営巣を確認していないし、西濠にはボート乗り場の南側以外に営巣場所はなさそうだ。蓮池か中濠の親子かな?公園以外の場所から来たかな?去年までの観察で、親は約2ヵ月で子供を強制的に巣立たせると思っていたけど、いろんなパターンがあるかもしれない。
少しだけ残されたヨシの茂みにカイツブリが座っている。もしかしたら抱卵?期待が高まるが、その後確認できないでいる。大雨が続き、水が濁ったり、少なくなったり多くなったり・・いろいろ悪い条件が重なっているから心配である。もう少し待ってみよう。
カルガモご一家(2)とカイツブリご一家(3)
「外濠のカルガモご一家」
10羽の雛を見た日(7月16日)の翌日に9羽しか確認できなかった。カラスとかいるし・・危険がいっぱい。
母カルガモは9羽の子をなんとか守っているみたい。
前日に会えなかっただけなのに、いきなり大きくなったように見える。びっくり。
お母さん、あなたの見守る姿はまるで観音様みたいです。
9羽の子どもは大きく広がって進むものだから、お母さんは右にいったり、左にいったり、ときどき出会う他のカルガモを追い払ったりと・・気を抜くことができない。
「蓮池のカイツブリご一家」
6羽生まれたという噂もあるけど、どうやら4羽かな?もうおんぶの時期は過ぎたらしい。子カイツブリたちは蓮の間をスイスイ元気に泳ぎ回っている。
先に生まれた子たちは、姿を見ないから既に巣立ったのかもしれない。
蓮が生長した蓮池は子育てに理想的なところ。蓮の下はカラスにもノスリにも見えにくいし、公園管理者は観光のために蓮を守りたいから、いきなり蓮が刈り取られる心配はない。あなたたちはここを生活の場に選択できたことは幸いです。
「中濠のカイツブリご一家」
中濠でのカイツブリの子育てを観察してから今年で4年目である。その間に石垣の草刈りが行われた記憶はない。また巣はいつも石垣側に作られていた。
カラスやノスリが卵を狙っても石垣に激突する可能性が高い。浮巣は石垣から少し離れているから、カラスやタヌキに襲われる可能性は低い。石垣から軒のように伸びた草は強い日差しとカラスやノスリの視界から卵や雛を守ってくれている。
石垣の草刈りは何のために行うのだろう。観光客は石垣を見て喜ぶのかな?
植物園側での営巣はむずかしいと思う。石垣がないから、カラスやノスリやタヌキに簡単に狙われる。
このところ、親カイツブリは1羽しか見かけなかったから、どこかで抱卵しているかと想像していたけど、どうなのかな?無事かな?
西濠のボート乗り場付近に成鳥のカイツブリがいた。ボート乗り場の南側に巣を作ろうとしていたカップルのうちの1羽かもしれない。ヨシが少しだけ残されたから、そこに営巣できる可能性がある。9月初めまでに雛が生まれたら11月初めには巣立つことができる。
ボート乗り場の南側のヨシがどんどん伸びて彼らを守ってくれますように!
ヨシを大切にしてくれませんか
蓮池と中濠に加えて、去年はボート乗り場の南側がカイツブリの第3の繁殖場所となり、3羽の雛がスクスク成長して巣立ってくれた。3組のカイツブリ夫婦が子育ての場所として弘前公園を選んでくれている。奇跡のようだと思う。
去年、三角池に加えて、ボート乗り場の南側はバンの繁殖場所ともなった。
しかし、ボート乗り場のヨシは受難である。ヨシが岩木川から流れてくるゴミをトラップするため、悪臭が発生し、近隣住民からクレームが出るという理由で、公園管理者はヨシを除去したいようである。
ヨシ自体は水質浄化作用を持ち、豊かな生態系を生み出すため、全国ではヨシを保全する試みがなされている。ヨシの保全には十分な計画を立てる必要があり(ヨシ群落の保全|滋賀県ホームページ)、刈り取りは少なくとも水鳥たちの繁殖時期を避けるべきである(ヨシ植生帯管理計画(案) )。
去年の同じ頃、ちょうどバンが子育てをしているときにもボート乗り場のヨシが刈り取られた。でも控えめに行われたため、ヨシはバンご一家を守り、3組目のカイツブリの繁殖場所ともなった。
今年の春、ボート乗り場の岸辺を工事しているときに、ヨシがすっかり刈り取られてしまった。これではバンもカイツブリも営巣できないと非常に悲しかったが、繁殖時期の前であったのは幸いであった。
夏になり、ヨシが少しずつ増えてきた。あともう少し茂って欲しいと思っていたときに・・・
その翌日(7月20日)に事件が起きていた
ボートがまだあるから、残ったヨシも心配である。去年は控えめだったのに、今年はどんな理由でこんなに寂しい姿にしてしまったのだろう。
岩木川からのゴミはボート乗り場の南側の一箇所(写真左上)から流入する。ゴミが問題であるならば、岩木川からの流入口(あるいは西濠北側への入口または西濠からの出口)で定期的にゴミを収集すればよいのであって、大切なヨシをあたかも無計画に刈り取る必要はどこにもないと思う。
そもそも、なぜ水鳥の繁殖時期を狙うのか?熟考・再考をすることなく、単純に去年もこの時期にやったから今年もやっているだけなのか?
ほんの少し残されたヨシの中に・・
あのカイツブリカップルが作った巣かもしれない。真っ白なものはなんだろう。卵だったら悲しすぎる。